“節税対策”自体を考えてみる…。

“節税対策”自体を考えてみる…。

 

節税対策とは言うものの…。

相続対策と言えば、“節税”と言っても良い程、同義語のように話題になる事が多いと思います。

しかし、納めるべき税金は払わないといけません。
国民の義務です。
でも、誰しも払う税金は少ない方が良いと思っています。
それが人情です。

ここで1つ先に言っておきますが、各種の法に従った節税に付いては問題ありません。
しかし、脱税はダメです。

ダメです

 

相談を受けているとたまに、昔ながらの脱法行為的な方法や法の網の目を抜けるような方法は?と、言った話に向きがちな方がいらっしゃいます。

そんな話も世の中に有りますが、もしそのような事を考えるなら、やめておいた方が良い!とハッキリと言えます。
その様な話になりがちな方は、えてして“儲け話”、“お得話”、“ここだけの…な話し”に興味が行きがちです。
話していると「なぜそこまで簡単に出来ると思うのだろうか?」と不思議に思えてくるほどです。
私は税理士では有りませんが今まで相続に関する相談を受け、税理士さんと一緒に仕事をする機会も沢山有り、相続に関する税金については多少の知識も有るつもりです。

税金に付いて良く感心する事は、「税制って、よく細かい事まで考えてあるなぁ。」と言う事です。
考えてみれば、当然です。
税制を考えるのは、東大や京大、大学院などを卒業した秀才の官僚や公務員の人達です。
その様な人達が大勢、よってたかって考えるのです。
毎年毎年考えるのです。

一部の天才の方は別かもしれませんが、普通の人にはそれ以上の事を考えるのは難しいハズです。
また同時に、その様な“儲け話”などに興味を持つ方は、税務署や国税局を甘く見すぎているとも思います。

なぜなら、こちらが思っている以上に………なのです。

さて、では相続に関する“節税”をどのように考えれば良いでしょう?

実は、先ほども書きましたが、今日の税制と言うものは大変細かく規定が有ります。
また、税制改正や細かい話ですが取扱い方の変更などが、毎年のように有ります。

その為、まっとうな節税と言うものは、如何にこの税制の細かい規定などを使うか、と言う事になります。
同時に、評価減や非課税枠などを如何に利用するか、などです。

具体的な事は、専門家の助けを借りるしかありません。
一般人には到底無理です。

と言う事で、具体的な事は専門家(=税理士さん)に任せるとして、“節税”に付いての考えや悩みに付いて書きたいと思います。

今まで節税の相談を受けてきて、よく言われる事柄が有ります。

1つは、その「専門家」に付いてです。
もう一つは、「節税したいのだけど、その為には…」と言うものです。

まず専門家に付いてですが、よくあるパターンが顧問の税理士さんがいるものの、相続についてはアドバイスしてくれない、相談しても納得いく答えが無い、と言った事です。

そうではなくて、〇〇を教えて欲しいのだが…

専門家の手を借りるしかない、と書いておきながらこの様な事を書くのは、多少気が引けるのですが、正直な所多いのです。

資産家と言われる方は、収入が多い方や所有資産が多い方、また会社の経営者の方や自営業の方などが多いのですが、その成り立ち上、顧問の税理さんやいつも頼んでいる税理士さんがいる場合が殆んどです。

しかし税理士さんと言っても、中には相続税についてあまり詳しくない方や、申告すると言う事に重点を置いていて事前に節税策をアドバイスする・相談にのると言う事に必要性を感じない・しない方もいるようです。

また、専門家と言っても得意分野が有るものなので、その事も原因の1つでしょう。

例えば法人の税務申告を沢山している・多くしてきた方は、法人の申告については詳しいですが、相続については実は殆ど経験無し、なんていう事も有るようです。

一般の方からすると、“税理士さん”と言うものは一つの職業なので、この様な違いが有るという意識を持っている方は少ないものです。
その為、相談している側に“税理士さん”に違いが有るなんていう意識が無い場合が多いのです。

因みにこのパターンは、特に会社の経営者の方からよく聞きます。
それらの方には当然、会社の顧問税理士さんがいます。
付き合いも長い上、信頼もおいています。
その為、もちろん相談します。

しかし、アドバイスが無い、ちゃんとした答えが無い。

でもそうなっても、“顧問の税理士さん”がいるので他の方に聞いたり相談したりは、殆どしない・出来ない様です。

また税理士さん側の立場としても、税理士さんの世界では、他の税理士さんの顧客に付いて相談にのる事を、敬遠する傾向が強いように感じますので、それらも影響しているかもしれません。
その為、他の税理士さんに相談しても、顧問の先生がいると分かった途端に、その先生に聞いてくださいと言われる、なんていう事も有るようです。
それらも、一因かもしれません。

この場合は、どうすれば良いでしょう?

この様な場合でも気になるようなら、やはり他の先生にも相談してみるべきだと思います。
特に、資産税の専門家を謳っている方や、相続(税)の相談会などをされている方が良いと思います。
もちろん、他の先生に相談して必ず解決するか?良いアドバイスがもらえるか?は、保証の限りでは有りませんが。

しかし収入の多い方や不動産を多く持っている方の中には、今までの経験上、もし事前に節税策をしておけば納税額にかなりの金額の違いが有ったはずなのに…、と言う方が少なからずいたからです。

数万円程度の差ならどうと言う事では有りません(?)が、数千万単位で違う方もザラにいました。
当然そのような差が出ない方や、問題のない方もいるでしょう。

しかし、違いが有るのに…、事前に何とか出来たのに…という場合、落差が大きい事が多いのです。
この落差を考えると、他の方にも相談してみる・確認してみる、と言う事をしないのは、あまりにもモッタイなさすぎると思うのです。

相談してみて問題無ければ安心です。
取り越し苦労だった、で済みます。

しかし本当は、“こう出来ます”とか、“この方が良いのでは”といった話が出てくるはずだったなら、とてももったいない話だと思うのは、私だけでしょうか?

しかしそうは言うものの、顧問の先生がいるのに他に聞くのはちょっと…、と言う方もいらっしゃると思います。
でも、物は考えようです。

お医者さんの世界では、「セカンドオピニオン」という言葉が、だいぶ定着してきました。
これと同じ考えではないでしょうか?

セカンドオピニオン

他の先生に聞いても同じ解答が返ってくるなら、更に顧問の先生への信頼が増すかもしれませんし。
何より、安心できます。

また、「他に相談する=他の先生に任せる」と考えがちですが、相談を受けるという事も税理士さんの仕事の1つでも有るのですから、他の先生に相談しても、相談だけで終わって良いハズです。
相談だけならば、顧問の先生には内緒ですれば良いだけです。

まあ、問題無しとなった場合より…、
そうで無かった場合の方が、また☓☓☓なのですが。

ではもう一つの、「節税したいのだけど、その為には…」と言うものですが、この場合の大半は言うまでもなく、こちらを立てればあちらが立たず、というやつでしょう。

分かり易い例では、「節税したい、しかしその為には賃貸マンションを建てるしかない、でも借金はしたくない」、というパターンなどでしょう。
私の経験上も、一番多いのがこれだと思います。

このパターンで悩んでいる方に、最初に1つだけ言わざるを得ないのが、すべてを一度に解決する方法は無い、と言う事です。
そんな方法が有れば、だれも苦労しませんし、悩んでもいない事でしょう。

では、どうすれば良いでしょう?
よく言われるのが、優先順位を考える、というやつではないでしょうか。

優先順位

全てを一度に解決する方法が無い以上、ある意味で消去法では有りますが、その方向しかないでしょう。

この優先順位で考えるという手法は、実際私も会社勤めの頃は、自分の通常業務上も、そして“営業上”も、よく考えたり使ったりしていました。

例えば、どのように営業上使っていたかと言えば、一枚の紙を出します。

紙には、

  • 収益を上げたい
  • 固/都税の節税をしたい
  • 資産の維持・管理の手間を省きたい・掛けたくない
  • 資産を減らしたくない
  • 相続対策をしたい

などと書いて有ります。

そしてこれを、お客さんに順位づけをしてもらうのです。
そして、その為には〇〇が必要ですね?と、今後どうするかを決めていくのです。

悩んでいる方にしてみれば、順位を別にすればそうしたい項目がいくつか有る、場合によっては全ての項目、ではないでしょうか?
(その為、営業上は効果が高かったです。もちろん、本当にお客さんの為になる、という部分も多いのですよ。念の為。)

これをそのまま、ご自身で考えてみればどうですか?と、言いたいのでは有りません。(それでも良いですが。)

先程の項目は、悩んでいる方の“悩み”そのものでしょう。
その為、これを出されると“悩み”が書いて有る為、その中から選択・順位づけをしてしまいます。

しかし、フリーランスの今の立場だから言える事ですが、これらの項目は悩みを解決するという事に付いては、不足していると思っています。

それは、「何もしない」といった様な項目・選択肢です。
(または、節税は程々でも良い・仕方がない、といった項目です。)

なにが言いたいか分かってもらえるでしょうか?

何もしなかったら、何も解決しないじゃないか?節税出来ないじゃないか?と言われるかもしれません。
その通りです。
しかし忘れてはならないのは、100%の解決策は無い、すべてを一度に解決する方法は無い、と言う事です。
そして大抵の事には、メリットとデメリットが有るという事です。

先程の項目から取捨選択・順位づけを行うと、どうしても“節税をするためには〇〇が必要”といった事になりがちです。
しかし世の中、良い事づくしの話はありません。
メリットにはデメリットが付いて来る事も有るのです。
なので当然、「節税したい、しかしその為には賃貸マンションを建てるしかない、でも借金はしたくない」などとなってしまいます。

何が言いたいかといえば、メリットとデメリットが有る、つまり得るものと失うものが有る、という事です。
(節税は出来るが借金の無い安心な生活を失う、借金の返済を気にしなくて良いという事を失う。)

先程の項目だけから考えると、メリット=得るものの順位を考えがちです。
優先順位を考える=比較をする、と言う事ですよね。

ここはそれにプラスして、デメリット=失うものの順位も考えて欲しいのです。

順位と言うよりも、選択肢の“比較”をして欲しいのです。

結局、同じ事なのでは?と思われる方も多いでしょう。
しかしこの様に書かせてもらったのは、気づいて欲しい・考えて欲しいからです。
気づいてもらう・考えてもらう=想像してもらいたいのです。
そのデメリット=失うものがやって来た時に、どうなっているか?どんな生活を送っているか?どんな気持ちになっているか?を、じっくり想像してみて欲しいのです。

将来の生活や精神面を考えてみるなぜなら、悩んでいる方の中には“節税”を考えるあまり、時間や生活の感覚が薄くなってしまう、という様な方がいらっしゃるように、よく思うからです。
悩んでいる間に、“節税”という事に大きく気持ちが向いてしまっていてる方が、多いように思うからです。

誰でも節税はしたいものです。
しかし、借金は少ない方・無い方が良いに越した事は有りません。
この2つの事だけを比べてしまいがちです。
“損得”の問題ですから当然、悩みは尽きないでしょう。

でも、「節税をしたい」という事と、「借金はしたくない」という事の裏には、“お金”だけでなく時間や精神的な事も、大きく関係していると思うのです。

節税をすると言う事は、基本的には相続発生時までの事です。
借金をすると言う事は、基本的には返済が終了するまでの事です。
(通常10~30年程度でしょう)

 

例えば、

・5,000万円節税できるが、2億円借金してマンションを建設した場合は、完済するまでの話です。
(借金に対する不安が、完済するまで自分と跡継ぎに付いてくる。)

・他の方法で500万円しか節税できないが、借金しない場合は相続発生時までの話です。
(節税額が少なくてもったいない事だが、そのもったいないという気持ちは相続発生時までです。)

といった“比較”の仕方です。

これを違った見方をすれば、

・5,000万円得するが20~30年ぐらい、借金とお付き合いの生活をしなければいけない(家族も)。

・500万円しか得しないが、借金を気にした生活はしなくて良い。

かも知れませんし、

・4,500万円(5,000-500万円)で、20~30年間の借金を気にしなくて良い生活を手に入れる。
という様な考え方も有るでしょう。

(因みに営業テクニックで言い方を変えると、4,500万円÷30年=150万円、150万円÷12ヶ月=12,5万円ということで、“年間150万円で借金の精神的負担とは、さようなら”、“月々12万5千円で安心生活”とも言えます。)

この様に、何年間か何十年間かの日々の生活の中での、精神的負担というものがどうなのか、その方角から考えてみる事も、とても大切だと思うのです。

どうしても、“節税=お金”に気が行きがちですが、しかし“節税=将来の生活”(の為)というのも忘れてはならない考えです。
そして、本来の考えだとも思います。

この様に考えの視点を変える、“比較”の視点を変える、という事でご自身にとってより良い取捨選択・順位づけ=比較も、出来て来るのではないでしょうか?

その上で、“選択”と、した方が良くは無いでしょうか?
もちろん、節税したいという気持ちはよく分かります。
誰だって、税金は少ない方が良いですから…。

でも、お金で換算出来るものと出来ないものが有ると言う事は、心の片隅に必ず置いておいた方が良いと思います。

その上で比較検討して、その結果の決断として、メリットとデメリットを受け入れる、という考えの方が正解ではないでしょうか?

ちなみに、「何もしない」という事も1つの選択肢だと、本当に思うんですよ。
だって、いくらお金が有っても精神的負担が長期間続いて、生活や気持ち(心)が充実しなかったら意味が無いとも思うので。

あと念の為ですが、マンション建設や借金(借入)に反対している訳では有りませんので。
場合により、とても効果的な方法でも有るのですから。


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