初めて相続対策を考える

相続対策は必要?これから考え始める超初心者向け

    これから考え始める、という人向けに。

 

まったくの初心者の方には、相続対策について考える事は“大変”な場合も多いようです。

なぜなら、知らない言葉や制度がたくさ出てきますし、聞けば聞くほど・調べれば調べるほど、複雑にそれらの事が関係し合うからです。

でも、まずはこれから考え始めるという方の場合は、本当の入り口部分としての所でどうなのか?を、まずは知りたい事でしょう。
特に初心者・これから考え始める人によく聞かれるのは、相続対策が必要かどうか?です。

本来は詳細を検討してみないと判断がつかない事も多いのですが、入り口としてまずは、相続対策が必要かどうか?は、やはり気になる所ではないでしょうか。

そこで、超初心者の方の入り口部分としての筆者が考える、簡単な判断材料を記させて頂きます。

お断りしておきますが、あくまで入口部分としての目安ですので、参考程度と言う事で宜しくご承知ください。
また、超初心者の為という事で、専門用語は極力使わないようにする為に、表現が正確でない場合も有るかもしれませんので、ご了承ください。

まったくの初心者です

その、「相続対策が必要か?」の相談や質問をお受けすると、聞かれる事は大きく2つに大別されます。

  • 相続税が掛かるのかどうか?
  • 遺産分割で問題無いかどうか?

です。

これから相続対策を考えるという場合、必要かどうかは入り口部分として、気になる事でしょう。

先ず相続税が掛かるかどうかですが、それを考える前に相続税の対象になる財産(課税財産)はどこまでの範囲かご存じでしょうか?

基本的には、生前に所有していた財産全てと考えた方が良いでしょう。

本当は、墓地などの非課税財産や生命保険の非課税枠などが有りますし、贈与を行った場合の取り扱いなど様々有るのですが、とりあえずは入り口部分なので、シンプルに考えられるようにするために、とりあえずここでは置いておきます。

さて考える事は相続税ですので、基礎控除を超えるかどうかが、最初の判断でしょう。

現在(2013年2月)相続税の基礎控除は、

  • 5,000万円+1,000万円×法定相続人の数

となっています。

(今後税制改正が行われ、3,000万円+600万円×法定相続人の数、になる可能性が有りますので、注意して下さい。)

(基礎控除という言葉自体も馴染みが無い方もいると思いますので、念の為。要はその金額までは税金が掛からないという事です。)

(もう少し詳しくという方の参考に→国税庁の相続税に関するホームページ

超えるか超えないか

 

基本的に、課税される財産に何の特例も適応せず考えるのならば、課税財産全ての金額がこの基礎控除を超えなければ、相続税は掛かりませんし申告の必要も有りません。

例えば、相続人が3人の場合は、5,000万円+1,000万円×3人=8,000万円が基礎控除額です。

財産が預貯金や現金だけの場合は、シンプルにその金額が超えているかどうかです。
超えなければ、相続税の心配は基本的に無いでしょう。
超える場合は、相続対策を考える必要(詳細を検討・確認)する必要が有ると思った方が良いでしょう。

しかし課税財産に不動産などが有る場合は、その不動産の金額(評価額)が問題となってきますので、注意が必要です。
超初心者の為にという事なので、細かい計算方法を説明する事はココではしません。
ただ一つ気を付けて頂く事は、この金額(評価額)は個別に計算しないと出てこないという事です。

たまに、毎年払っている固定資産税が〇〇万円だから掛からないと思うんですが…、という方がいらっしゃいます。
また、ご自分の土地の近くで売っていた土地が〇〇〇万円だったから、その金額(評価額)ぐらいだろう、と思っている方もいらっしゃいます。
相続税を考える場合には、どちらも間違っています。

不動産は、土地の場合は路線価か固定資産税評価額の倍率で、建物は固定資産税評価額を元に、利用状況に応じて計算します。
その為、それら固定資産税の金額や周辺での土地価格等は、参考にはあまりなりません。
実際に相談を受けて確認してみると、それらの金額とはかけ離れている場合も多く有ります。

その為本来は、税理さんや税務署に相談して確認する事が必要なのですが、とりあえずの第一歩としては、土地は路線価×面積(㎡)で、建物は固定資産税評価額で考えてみる事ではないかと思います。

超初心者の方には、この路線価や固定資産税評価額などの言葉自体、馴染みのない方もいらっしゃるでしょう。
路線価というのは、毎年国が土地ごとの㎡あたりの単価を決めていて、発表しているものです。
税務署などに路線価図が本などになって備えられていますし、インターネットで国税庁のホームページでも簡単に見る事が出来ます。
地図に、道ごとに単価が決められていて、持っている土地の前面の道の単価が、計算する時の基準になります。相続税を計算する時は、この路線価を基本的に使います。
(参考→国税庁の路線価のホームページ

また建物の固定資産税評価額は、毎年4~5月頃に市町村から送られてくる固定資産税の納付の書類に記載されていますし、所有者本人であれば市役所等に行けば教えてくれます。
この、固定資産税評価額というものは、固定資産税を計算する時の元になっている金額で、固定資産税の金額そのものではなく、別物です。

そこで、持っている土地ごとに面積×路線価で計算した額と、建物の固定資産税評価額、それ以外の財産の金額を合計して、この基礎控除額を超えるかどうかが、入り口部分としての判断材料として考えてみてはどうでしょう。また、借入金が有る場合は、その金額を引いての合計額です。

ただし気を付けないといけないのは、本来は不動産の金額(評価額)の計算はそんな単純では有りませんので、基礎控除額に近い金額の場合は、掛からないかもしれないが“要確認”、と思ってもらう事です。

ご注意。不動産の相続税評価はかなり複雑です。

例えば、持っている土地が角地の場合など路線価はそのままの金額ではなく高くなりますし、大きさや形などによっても変わります。更に土地も建物も利用形態などによって評価の仕方が変わる場合が有ります。

その為、この様にして計算した額が基礎控除の額を少し下回るからといって大丈夫とは思わないで下さい。
具体的にいくらとは言えませんが、細部を計算すると不動産の評価額は何割も平気で変わります。

先程の基礎控除の合計額が8,000万円の場合で不動産が財産に含まれる場合では、計算した額が半分程度にしかならない様なら、相続税が掛かる可能性はかなり少ない・おそらく無いと言えるでしょうが、例えば7,000万円前後なら要確認だと思います。
本当の単純計算なので、金額(評価額)が増える事も減る事も有るからです。

誤解しないで頂きたいのは、何も不安を煽っている訳ではないという事です。
ここで計算した額が、基礎控除額を超えるからといって、必ずしも相続税が掛かる訳では有りません。

詳細を計算すると、金額(評価額)が下がる事も多いですし、自宅などの場合は特例で評価を下げる計算をする事も有ります。

しかしそれらの特例によって計算した額は、相続税は掛からなくなっても相続税の申告そのものは必要な場合が有るのです。
期限内に申告したら、特例を認めると言う事です。)

もし特例で計算すると相続税が掛からないからといって申告を忘れると、その特例が認められないという事になり、後々特例を使わないで計算した額で相続税を納付する事になります。
(因みに、申告が必要だったのにしなかったと言う事で、相続税に利子をつけて払う事になりますので、納付する額は増えます。)

ちゃんと申告すれば相続税は掛からなかったのに、申告しなかったが為に払う羽目になる、という事が考えられるのです。
その為にも、基礎控除額前後の方は『要確認』なのです。
基礎控除額に近い金額以上の方は、一度は専門家に相談や確認をする事をお勧めします。

次に遺産分割で問題無いかどうかですが、これは判断がつけ難い所です。

入り口部分として相談される時は、こういう風に分けたいが問題無いか?というケースが多いのですが、それは民法上等の問題の話であって、遺産分割で揉めるというのは、相続が発生した後に相続人の方々が、分け方について納得がいかない場合に問題が発生する事です。

民法上問題が無いからといって、揉めない訳では有りません。
納得がいかないという感情の問題ですので、事前の確認は出来ませんし、全く問題無い様にできるとも言えないからです。

その為、超初心者の方が分割について考え始めるに当たっては、結論の出ない、揉めるか揉めないかを考えるよりも、残す側としての意思表示をするかどうか?それを残しておくかどうか?という視点で考え始めて頂いた方が良いと思っています。

それが決まってから、どのような内容が良いか?どの方法が良いか?を考えないと、方向性が定まりません。

では、意思表示をする、それを残しておくというのはどういう事でしょう?
手法としては遺言書の作成や生命保険の利用・その他ですが、それら手法の事は、今回は置いておいて、意思表示をすると言う事を考えてみたいと思います。

まず遺産分割での対策の有無を、ケースでわけて考えてみましょう。

パターンとしては、

  1. 何も分割に対して準備しなかった。そして、揉める事も無かった。
  2. 何も分割に対して準備しなかった。相続発生後、分割で揉めた。
  3. 分割に対して準備しておいた。しかし、揉める事は無かった。
  4. 分割に対して準備しておいた。相続発生後、分割で揉めた。

では、ないでしょうか。

1の場合は、何も問題ありません。
3の場合も、取り越し苦労だったと言う事かもしれません。

問題は、2と4です。
(4の場合について、超初心者の方は準備していて何故揉めるの?と思われるかもしれませんが、細かい話しになるので今回は書きませんが、準備しておいても内容や手法によっては、揉める時は揉めるという事だけ覚えておいてください。)

遺産分割で揉めるとはどういう事?

では、意思表示をする・それを残しておく、というのはどういう事かという事ですが、先ほどのパターンで2の場合は、当然話し合いで解決しなければ、弁護士さんのチカラを借りるとか、調停や裁判となります。
この場合、各相続人が各々の考えに基づいて、解決を図る事になります。

次に4の場合ですが、2と同じように基本的には各相続人が各々の考えに基づき解決を図ろうとする事は同じですが、2と違うのは、例えば遺言書を作ってあったとしたら、それを優先しなさいという民法上の決まりから、残す側の意思に基づき分けるようになります。
つまり、優先される解決の糸口を残しておける訳です。

この揉めた時の、優先される解決の糸口、という考え方がポイントだと思います。

揉めるかどうかは、その時になってみないと分からない事です。
もし揉めなければ、心配しただけ損、単なる取り越し苦労、となります。

しかし揉めた場合、揉めるぐらいなのですから裁判で決着したとしても、相続する人たちの関係は心情的には綺麗さっぱりとはいかないでしょう。
モチロン遺言書が有ったとしても、心情面は全く綺麗さっぱり、とはいかないかもしれません。

しかし、ドロドロした話し合いや裁判などをしなくて済む、早期に決着を付けられるという様な事が可能であればどうでしょう?

そして、その様な解決の糸口を残しておいてあげるという事は、残す側の本人しか出来ない事です。

遺産分割で相談を受けると、民法上は問題が無いから大丈夫だろうと考える方もいますが、そうでは有りません。
相続する人達の感情の問題なのです。
その為、揉めるか揉めないかは、事前には分かりません。

その事前に分からない事に対して、何らかの手を打っておいてあげるかどうかの問題なのです。

相続する人たちが揉める事は無い、と思うなら必要が有りません。

相続する人たちが、揉めそうだと思うなら当然ですし、相続する人たちが揉めないかもしれないが、もしかして揉めた場合の為に…、と思うなら必要でしょう。

必要有るか無いか?

まずは、その部分から考えてみましょう。

そして、その部分の考え方と財産の内容から、取るべき手法が変わりますので。

参考として、相続争いは年々増加しています。
家庭裁判所に持ち込まれる件数も増加していますが、特に増えているのは5,000万円以下の財産に対する件数です。
7割以上がそうだとの事。

1,000万円以下が1割以上だとか。
感情の問題ですから、100万円でも当然揉める時は揉めます。
その事を、忘れないで下さい。

(興味のある方は、裁判所の司法統計を参照して下さい。ただしグラフなどになっていませんし、探し出さないといけないので、かなり分かりづらいですが…。→裁判所・司法統計検索システムのページ


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