相続対策と時間
相続対策と“時間”の関係
相続対策を考える時に、“時間”が悩ませたり、解決を遅らせたりする事が有ります。
どういう事かといえば、相続とは、“いつ起こるか分からない”という事です。
切羽詰まっていて時間が無い事が分かっている時と、いつの事か分からない・実感が無い時では、判断に差が出ます。
特に、いつの事か分からない・実感が無い時は、判断自体や検討自体を先送りにしがちです。
しかし、結果として何も問題が起きなかった時は良いのですが、そうではない時は後の祭りです。
そして意外に意識されない事に、相続が発生するだいぶ前から、検討したり対策したりが出来なくなる事が有ります。
私の祖父の家の事例です。(地方の農村です。)
祖父には子供が多い為に、念の為に遺言書を作ろうとしていました。
その矢先、自転車で転んで骨折して入院、その後も自宅で殆ど寝たきりになってしまいました。
(95歳だったので、家族からは乗らない様に言われていたのですが…。)
最期は99歳で永眠しましたが、老衰だったので大往生でしたでしょう。
さて、葬儀が終わってしばらくした頃、もめているというのです。
分割で。
(親の実家の事ですから、私は口を挟みませんでしたが…。)
子供達の兄弟のうちの1人が、田んぼを1枚どうしても欲しいとの事。
田舎の田んぼですので、金額にすると大した額では有りません。
ましてやその田んぼを欲しいと言っている兄弟というのは、東京に住んでいて将来故郷に帰ってくる気も有りません。
その為、跡継さんがお金で解決しようと持ちかけたそうですが、当初は頑として聞き入れなかったそうです。
どうして田んぼにこだわったのか、その真意は分かりませんが…。
さて、当初作ろうとしていた、遺言書はどうなったのでしょう?
結局、“作れなかった”のです。
本人もその気でしたし、跡継さん家族もそのつもりでした。
しかし、入院する・ほとんど寝たきり、となると当然に親類縁者が来るようになります。
しかも田舎の事です、その数の多い事…。
病気をした訳では有りませんでしたが、そこは95歳です、医者に悪い所の1つや2つは言われています。
そしてほとんど寝たきりです。
そんな中で、なかなか遺言書を作るという話自体が、しにくくなってしまったとの事でした。
(後の祭りでした。)
実はこの様なケースで、相続対策がしづらい・出来ないケースも結構多いのです。
また、もめているケースに多いのが、1次相続の後に2次相続が有る場合です。
典型的なのが、お父さんがいる間(存命中)は、誰も何も言わなかったのに、お父さんが亡くなると色々言い出す人が出てくる、というパターンです。
このケース、厄介な事が多いです。
こういう時は大抵、相続に対する準備がされていない事が多いですし、色々言い出す人を見ていると、どうも焦ってくるようです。
今しか無いって。
何が言いたいかといえば、いつ来るか分からない“相続発生”ですが、その相続発生までの時間の全てが、相続対策を考える・する時間には出来ない事も有る、と言う事です。
しかも、出来る事・やれる事が分かっていながら、出来ないのは…。
また相続発生後も“時間”が関係します。
現状の法令等では、期限が決まっている事が多く有ります。
特に、相続税の納付などです。
相続税が発生すると言う事は、当然に分割にも影響してきます。
また、発生前と同じように人間感情や風習・習慣なども有ります。
通常は初七日は、相続の為の手続きや準備を始めたとしても、いきなり分割協議を始めるなんてことは無いでしょうし、四十九日が過ぎるまで、本来は話もしづらいでしょう。
(そのような事を無視する人が、もめてますけどね。)
しかし、期限が有るものは迫ってきます。
人の感情とは関係なしに。
そして、揉める時ほど、時間が切迫しているものです。
なぜなら、要求を突き付ける方は、早く決断が欲しい訳ですから…。
その様な事態を回避する為にも、“相続対策”は、やはり重要です。
何がしかの対策をするのは、気持ちが固まってからでも良いと思います。
でも、検討するのは早く始めるべきです。
誰かに相談した、何かを検討した、次の日には対策は万全、なんてことは無いからです。
相談する・検討するにも時間が掛かります。
ましてや対策をするにも時間が掛かります。
そして“時間切れ”は、必ずやってきます。
いつ来るか分からないだけで。
後悔先に立たず、とならない様、注意しましょう。