不動産活用といっても経営者です。

不動産活用といっても、その前に経営者です。

不動産活用とは言っても…

     経営者である事をお忘れなく。

よく不動産の活用の相談を受けていると、活用方法などではなく、その方本人が問題で有る場合も有ります。
(面と向かっては、言いませんが…。)

どういう事かと言えば、“不動産活用”というくらいですから、ある程度の期間にわたる事です。

相続などで、家系として不動産を守っていく・引き継いでいく場合などは、ずっとです。

となると、“不動産活用=不動産事業”です。
そう、“事業”なのです。
この意識の薄い方が、よくいらっしゃいます。

そして“事業=経営”であるという意識です。

賃貸経営とは事業です。事業で有る以上経営者です。

この様な意識が薄い方というのも、ある意味しょうがない事だとも思います。
バブル崩壊ぐらいまでは、土地神話なんて言葉がもてはやされました。
実際に土地価格の上昇が続きましたし、借り手を探す苦労なんて、今ほどでは到底有りません。
(あの頃は、セカンドハウスなんて言葉も良く聞きました。
本当は必要無いのに買う人もいましたよね。懐かしいですね。)

また、不動産や建築の営業上で“不労所得”なんて言葉もよく使われましたし、マンションなどの賃貸経営には一括借り上げなどの制度も有りますので、その様な意識は持ちにくかったり、忘れたりする事も多くなると思います。

けして、“不労所得”の考えが間違いでは有りません。
一括借り上げなども良いシステムだと思います。
それ以外にも、頼りになる管理会社さんや不動産屋さんもいます。

だからこそ、“事業=経営”つまり経営者である、という事を忘れさせがちです。
場合によっては、経営者である必要が無いようにも思わせます。
経営者の視点、と言っても良いかもしれません。

また、不動産が“財産”で有る事も一因でしょう。
金額に換算出来る上、貸して欲しい・売って欲しい人がいるとなると、なおさらでしょう。
ましてや、そこから収益が上がってくる事が有る訳ですから。

なぜ、この様な事を書いたかと言えば、悩んでいる、特に不動産活用で問題を抱えている、といった場合の原因が、本人に有る事があるからです。(言いにくい話ですが…。)

典型的なのは、賃貸マンションで空室が埋まらないといったケースや、貸地で借り手が決まらないといったケースに多かったように思います。

八百屋さんに例えてみる

 

 

例えば、賃貸マンションを八百屋さんに例えてみましょう。

八百屋さんを経営していて、商品が傷んでいたりしたらどうされますか?
新鮮な野菜に変える、仕入れるという事をしますよね?
売れないでしょうし、お客さんも減ってしまいますから。

八百屋さんを経営していて、お客さんが来ない時、どうされますか?
店先で呼び込みの掛け声をだしてみたり、新聞広告を入れたりしますよね?
よっぽど良い商品や安さが無いと、勝手には来てくれませんから。

八百屋さんをしていて、近くに大手のスーパーが開店したらどうされますか?
競争になりますので、対策を打ちますよね?
お客さんを全部取られたら、潰れてしまいますから。

普通に考えたら、当然ですよね?
これらは、経営者であれば誰でも当然に考える事です。

商売の改善を図るのが経営者

 

 

“事業=経営”である、賃貸事業の経営者である、という意識があれば経営者の視点を持っているハズです。

何を言いたいかと言えば、

物件に清潔感が感じられなくなってきている、このままでは物件のイメージが悪くなってしまう、という事に気が付かないといけないと、言いたいのです。
悪いイメージが付いてしまう前に。

部屋の内装や設備が古くなってきている、周りの物件と比べると差が付いてきている、という事に気が付かないといけないと言いたいのです。
空室が埋まらなくなってしまう前に。

お客さん(入居希望者)を増やす為に、募集にチカラを入れないといけない事に気が付かないといけないと言いたいのです。
お客さん(入居希望者)が減ってしまう前に

内見(内覧)が減っている、空室や条件の問い合わせなどが減っている、という事に気が付かないといけないと言いたいのです。
空室を埋める事が出来なくなる前に。

競合物件への対策を打つ・準備する、という事に気が付かないといけないと言いたいのです。
入居者を全部取られる前に。

近くに新しく物件が出来たら競争になる、という事に気が付かないといけないと言いたいのです。
競争が始まる前に。

そんな事は分かっている、百も承知、と言われるかもしれませんが、ポイントは、“事前にや、“早く”という事です。

経営者たるもの、事前に気づくべき、早めに対処すべき。

また事前に気が付いたり、準備や対処に怠りなかったとしても、100%問題の発生を防ぐことは出来ない事も当然有ります。

しかし、問題を大きくしてしまっている事が、よく有るのです。

例えば20室のマンションのうちの1室だけが空室なら、手は打ちやすいでしょう。
損失や対処も小さくて済みます。

例えば、仲介してくれる不動産屋さんへ、認知度アップ・周知の為に少し顔を出すと決まるかもしれません。
条件変更でと言う事なら、頑張ればフリーレント1ヶ月と言う事で済むかもしれません。
倍にしても2ヶ月分です。

しかし、20室のうち10室が空室となると、事は大きくなります。
簡単に埋まるなら、半分も空いているハズはありませんので、不動産さんにしょっちゅう顔を出したり、お願いしたりという事を、だいぶしないといけないかもしれません。
同じフリーレント1ヶ月としても、10ヶ月分です。倍だと20ヶ月分です。
ましてや半分が空室という事は、もっと条件を良くしないと済まないでしょう。
入りにくいから空室なのであり、その入りにくい空室の数が多いのですから。
損失は倍ではなく、もっと大きくなることが殆んどでしょう。

この様に、損失が大きくなる、対処が大きくなる、という事ばかりでは有りません。
何より、時間的余裕と金銭的余裕が無くなるのです。

リフォーム代などの方が分かり易いかもしれません。
1室だけなら、金額も多くは有りません。
なによりも、他の部屋は入居していますから、収入が確保されているので負担は大きくなりません。
事前にリフォームしたり、必要に応じてする事も大変さは低いでしょう。

しかし、10室だとリフォーム金額も大きくなりますし、入居している数が少ないので収入も少ないという、ダブルパンチ・二重の痛手です。

事前に全部リフォームするのは大変だからと、5室しかしていないなんて事もよく聞くことですが、いざ問い合わせが有った・内見(内覧)に来るとなったらどうでしょう?
内見(内覧)の部屋がリフォームされていなければ、決まる確率は…、下がって当然です。
すぐに入居出来るなら借りたい、となったらどうでしょう?
大急ぎでしないといけなくなる場合も出てくるでしょうし、間に合えば良いですが、間に合わなければ、空室のままです。

空室続きの物件に次から次へと、入居希望者が有れば良いですが無いから空室なんです。
収入が少ない時に大きな金額が必要になる方が、負担が大きくないでしょうか?
急ぎの方がしんどくないでしょうか?
この、“事前に”や“早く”という事が無い方ほど、空室が増えます。

なぜなら、早く対処していない・出来ていないから増えた訳ですから。
それも大きな一因なのですから。 

さてさて、経営者(の自覚)や経営者の視点と言う事を長々と書いてきましたが、なぜかと言えば、不動産の活用を考える時に、大切であり必要だからです。

例えば現在未利用の空地が1ヵ所有ったとします。
この活用を考えた場合、借地で貸すのも一つでしょう。

貸す時の流れを分解すると、借り手を探す、借り手を理解する(審査する・判断する)、契約する、賃貸中、解約する(になる)、の5段階です。

“借り手を探す”場合の方法は様々でしょうが、これは事業で言えば“営業”で、告知活動や訪問活動です。
(八百屋さんで言えば、お店に商品を並べる事や、広告を打ったりという事です。)

“借り手を理解する(審査する・判断する)“も“営業”で、面談や交渉です。
(八百屋さんで言えば、来店したお客さんが興味を持った野菜は何かを聞きだし、その野菜が新鮮であったり安かったりという事をアピールするでしょう。)

“契約する”は、受注です。
(八百屋さんで言えば、お買い上げです。でも値引き交渉や、オマケをおねだりされたりと、すんなり決まるかどうか予断を許さないかもしれません。)

“賃貸中”は、買ってもらった商品を使ってもらっている期間であったり、サービスを提供している期間です。
(八百屋さんで言えば、お客さんが買ってから料理するまでです。)

“解約する(になる)”は、商品を使い切ってもらったりや返品であったり、サービスの提供が終わる・解約される、です。
(八百屋さんで言えば、料理したものを食べる事です。美味しかったらまた買ってくれるでしょう。でも、美味しくなかったり、実は半分に切ったら中が傷んでいた、なんて事があれば…。)

普通の会社や事業の経営と、何ら変わりません。

そして、一段上から見てみましょう、見方を変えて俯瞰してみましょう。

例えば分かり易くする為に、会社が土地を所有しているとしてみましょう、㈱○☓不動産です。
所有はこの土地一つしかなく、最近まで、この土地の収益で事業が成り立っていました。
たまたま、前の借り手が出てしまい空地になってしまいました。
今は収入が有りません。このままでは倒産です。
当然、なんとかしようとします。

“借り手を探す”場合の“営業”です。
自分で広告を打ってみたり、仲介業者さんにお願いしたりです。
でも、もう一段上から考えてみると、なぜ空地になったのでしょう?
空地になった原因が分からないと…。

“借り手を理解する(審査する・判断する)“の“営業”で、面談や交渉です。
希望者の状況を聞いたり資料をもらったりして、検討・判断します。
でも、もう一段上から考えてみると、なぜ検討・判断するのでしょう?
相手もこちらに対して、検討・判断している事を忘れると…。

“契約する”は、字のごとく契約です。
契約書を交わしたり、必要なお金を受け取ったりです。
でも、もう一段上から考えてみると、なぜ契約書を交わすのでしょう?
契約とは約束で、その証しです。
しかし約束を、守れない・守ってくれない時も有ると言う事を忘れると…。

“賃貸中”は、借りてもらっている期間です。
借りて利用してくれています。
でも、もう一段上から考えてみると、なぜ借り続けてくれるのでしょう?
借り続けてくれている理由が有るハズです、それが分かっていないと…。

“解約する(になる)”は、契約終了や解約・解除です。
でも、もう一段上から考えてみると、なぜ更新しなかったのでしょう?出来なかったのでしょう?
更新しなかった・出来なかった理由が分かっていないと…。

これらは、土地でも建物でも同じです。

俯瞰してみましょう。一段上から考えてみましょう。広告・契約・交渉の流れ。

不動産の管理を管理会社に任せていたり仲介を不動産屋に任せている場合には、そんな事は管理会社や不動産屋が考える事だから関係無いという意見も有るかもしれません。

しかし、同じです。
考える相手が借り手そのものから、管理会社や不動産屋などに変わっただけです。
つまり、相手を探したり契約したりなど全てを自分ではしていない、又は殆どを任せているとしても、事業を行っているのは所有者本人です。
管理会社が勝手に地代や条件を決める訳では有りません。

条件を決めるのは、本人です。
最終決断をするのは、本人です。
結果の責任は、本人に有ります。

空地になったからと借り手を探しても、地代の周辺相場などの条件を知らないと、安い金額で募集するなら良いですが、もし知らずに高い金額で募集してしまったりしたら、直ぐに借り手が見つかるでしょうか?

以前借りていたのが工場で、実は周辺に住宅が増え騒音問題で移転せざるを得ず解約したとすれば、その事を知らずに再度工場用地や騒音・匂いの発生する業種の借り手を探しても、すぐに見つかるでしょうか?

しかし逆に周辺に住宅が増えて来たようなら、賃貸住宅や道路付によってはコンビニなどの小売り店の方がよいかもしれません。

以前の借り手が近所に安い地代で借りれる所が有る事を知り移転したとしたら、そしてもし安く借りれる所が近所に他にも有れば、今までと同じ地代で募集をして直ぐに見つかるでしょうか?

しかし事前に借り続けてもらえるように、地代を少し下げてあげていたら借り続けていたかもしれません。
(移転するだけでもお金が掛かるのですから…。)

客観的に考えてみましょう

 

 

今後の活用を考える場合としても、もう一段上から考えてみましょう、俯瞰してみましょう。

具体的な金額などではなく、方向として考えるなら条件は何でしょう?
長期間借りてもらう方が良いなら、借り手が長期間借り続けられる物件と条件で有る必要があります。

例えば飲食店なら、売り上げから経費を引いて利益が出なければ、いつかは撤退・閉店してしまいます。
貸す方は、モチロン地代は高い方が良いでしょう。
しかし、その高い地代で借り手が付いたとしても、経営上負担が重い地代なら撤退・閉店の可能性が高まります。
つまり、土地の所有者の収入と引き換えに、借り手の撤退・閉店のリスクを高めている可能性も有るのです。
もし商売が上手く行かず閉店した場合、得したのはだれで、損したのは誰でしょうか?

モチロン、次の借り手がすぐに見つかる物件と条件なら大丈夫です。
しかし次がなかなか見つからない様な場合、貸し手と借り手の両者が損をしている場合も有るのではないでしょうか?
空地の間は、土地の所有者も収入が無いわけですから。
そもそも、借り手がすぐに見つかるなら、借り手が見つからないなんて問題に、なったり苦労したりしませんし。

それであれば安めの地代で借り手を探して、その中から商売が上手そうな・実績のある借り手に貸せるなら、その方が得かもしれません。

名前は出しませんが、長期間借り続ける事で有名な外食産業の会社が有ります。
撤退・閉店した所を殆ど見たことが有りません。
それらの会社の借りている条件は…、貸し手にとってはかなり厳しめです。
しかし、土地の所有者の方が困っているとか損しているとかは、聞いた事が有りません。
(どちらかと言うと、鼻高々です。)

それらの優良な借り手は、世の中では少数派だとは思いますが、通常の借り手さん相手でも同じように考える必要が有るのではないでしょうか?
誤解しないで頂きたいのは、安さで勝負と言っているのではありません。
地代や家賃は、周辺相場や物件の内容、契約条件などにより決まるものです。

そうではなくて、逆に周辺より高い地代や家賃でも借りたいという相手が現れた場合は、特殊事情(そこでないとダメ)が無い限り、なぜ?…と言う事に気が付く・考えるという事が、必要でありポイントではないか?と、いう事が言いたいのです。

なぜ、無理して高い地代(家賃)で借りるのだろう?…

という事を、考えれるかどうかと言う事です。
そういう視点を持てるかどうか?という事です。
そこには…、借りたい理由ではなく、そこを借りざるを得ない理由が有るかも知れないのですから。

そして、借り手も貸し手も、無理はいつかどこかに響いてくるものです。
後は、その無理が祟ってしまわない事を祈るのみ、となってしまいます。

これは経営でしょうか?それとも賭け事でしょうか?

長々と書いてきましたが、不動産の活用で悩んでいる方に参考にしていただければと思うのは、経営者の視点・考えを持つ事です。

それは、単純に地代などの金額や契約内容、空室になった・空地になった事をそのまま捉えるのではなく、なぜそうなっているのか?なぜそうなったのか?と、言う事を考えた方が良いという事です。
モチロン上手く行っている場合もです。

不動産活用で成功されている方の話を聞くと、色々な事をよく御存じです。
さらに、とても戦略的に考えておられる方が多かったです。
そして、その戦略を実行しておられました。
事後対処の方は、殆どいません。

早く対策・事前の準備

もう一つは、100%の解決策はなかなか無いと言う事です。
そのなかなか無い100%の解決策を探しているが為に悩んでいる、という方も多いようにも思っています。

会社の経営や事業運営も同じです。
100%なんてなかなか有りません。

100%儲かる事業や商売なんて有りません。
必ず、リスクや変化が付き物です。

会社の経営や事業運営の場合は、すぐに決断が必要です。
その為に優先順位の高さで判断したりする必要が有ります。
また、ダメだった場合の次策を考える事も必要でしょう。

同じように不動産活用についても、100%の解決策を求めても残念ながら、なかなか有るものではありません。
有ればモチロン結構な事です。

もし100%ではない選択肢から選ぶしかない場合には、取る(取らざるを得ない)選択肢の向上策を用意したり、安全策を用意したり、また代替案を用意しておいたりしてみてはどうでしょう?
または、安心材料を増やしてみてはどうでしょう?

例えば、

  • もしこの借り手がダメだった場合、違うこういう借り手が有る・借りてくれそうだ、と言う事を知っておく・調べておく。
  • もしこの契約が途中でダメになった場合は、こういう方法が有る・こうすれば良い。

などです。

実際にいつでも実施出来るようにしておかなくても、知っている・分かっておくだけでも、違うと思いませんか。
心の準備だけでも。
そしてこの様な準備は、自分で経営しているという感覚を持っていれば、するものではないでしょうか。

これから活用に付いて検討する場合、100%安心できる方法が見つかればそれは良い話ですが、そうでは無い場合には、選択していくしかありません。
どうしても、100%の方法は無いかと悩んだり探したりしがちです。
でも、無い場合が殆どです。

その時は例えば、60%の選択肢にプラスして、+20%の向上策なんて言うのも考え方の1つだと思います。


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