賃貸経営と空室対策 | 客付け・全体編
空室対策は、基本的な事が一番重要です。
その基本が、出来ているかどうか?です。
空室対策について、様々な手法が有ります。
また様々なサービスも有ります。
しかし、なぜ世の中から空室が無くならないのでしょう?
なぜ空室が増えるのでしょう?
以前にも、
空室が増える原因?
空室対策=入居者目線
不動産活用といっても経営者です。
の、記事にて関連する内容を書いたのですが、それらは考え方を中心にした記事でしたので、今回はもう少し具体的にというか、具体策の選び方に付いて書いてみたいと思います。
ただし私は、空室対策が専業では有りませんので、本当に個別具体的な事はそれらの専門家さんや会社のインターネット上の記事やサイト等を、ご紹介する形でさせて頂きます。
さて、まずは何を考えるにしても、空室対策を考える時に忘れてはならない、賃貸経営の入居者のサイクルを確認してみましょう。
この流れは、大家さんなら当然知っている事です。
部屋探しをしている方が物件情報を探します。
そして、不動産仲介会社等に問い合わせをします。
検討対象の物件・物件情報が有れば、実際の物件を見て判断します。
契約交渉の後、成立すれば入居する、という流れです。
この流れの繰り返しになります。
空室対策のポイントは、この5つの段階の全てに有ります。
では、具体策にはどのような物が有るのでしょうか?
筆者の考えも、また有名・著名な空室対策の専門家の方々の意見も、基本的には同じ様な考えです。
(ホームページや本などを拝見すると、そう思います。)
●空室になる原因の考察
- 物件自体の問題点の把握など。
- 大家さん自身に、問題は無いかなど。
- 周辺の関連会社(仲介業者や管理会社)に問題は無いかなど。
●入居率アップの為の考察
- 内見者数と成約率等のチェックなど。
●対物件の具体策
- エントランスや共用部分の、見栄えなど。
- モデルルーム・POP等の内見時の演出など。
- リフォーム・カラーコーディネートなどによる、グレードやイメージの向上など。
- 植栽・鉢植え・除草など、物件の演出や感性への対応など。
- 掲示板・ポストなどの、見栄えや利便性など。
- 空室時の室内環境の維持による、案内時のイメージダウンの排除など。
●対募集に対する具体策
- キーボックスの設置など。
- 現地看板・チラシなどの設置。
- マイソク・物件資料の見直しや新規性など。
- 情報誌への掲載など。
- 賃貸情報サイト対策など。
- 個別ホームページなど。
- ライバル物件の調査・確認など。
- 仲介会社・管理会社等への対策など。
- 仲介会社の営業マン対策など。
●条件の具体策
- 家賃の見直しなど。
- 敷金・礼金・保証金・ゼロゼロなどの検討。
- フリーレントの活用など。
- 家具付きの検討。
- インターネット対策など。
- 水道光熱費への配慮でお得感を検討するなど。
- 入居時の年齢や性別・家族構成など。
- 1Rでの2人入居など。
- 外国人の方の受け入れの検討など。
●入居中対策
- コミュニケーションなど。
- クレーム対策など。
上記にプラスして筆者の考える大家さんが検討すべき項目としては、建て替えや買換え・売却の検討などの出口戦略・転換戦略との関係も有ると思っています。
個別具体的な内容は、下記のコンサルタントの方々や会社のホームページや書籍などを参考にしていてだければ、と思います。
(筆者は、大変“参考”になると思っています。)
ちょっと大きめの本屋さんにでも行けば、空室対策の本は結構な数が並んでいますので、参考になるものも沢山あります。
★空室対策110番(*インターネットエクスプローラでご覧ください。)
上記以外にも、仕事柄ネット上で様々な手法や会社を検索しますが、非常に沢山の情報が有りますし、有益で参考になる物が有ります。
筆者がこれまでに空室対策で相談を受けた時、そして解決出来た時、殆どの場合は上記の手法等の『基本的な事柄が出来ているかどうか?』という事が、最大のポイントでした。
殆どの手法は、知られた方法です。
全ての手法はご存じ無かった方も、いらっしゃるかもしれませんが、それでも特殊な方法は有りません。
具体的なやり方を多少変えて、目新しさなどを演出している場合も有りますが、基本的な内容は変わりありません。
大家さんの中には空室問題で悩んでいて、上記のホームページや本を知っている方、セミナーや勉強会に出た事が有る方もいらっしゃるでしょう。
当然、参考になった方・空室が埋まった方がいると同時に、試してみたが空室を埋めるには至らなかった・あまり役には立たなかったという方もいる事でしょう。
さて、なぜ結果に違いが出たのでしょうか?
筆者の経験上ですが、これまで受けた空室問題での相談から言える事は、上手く行かなかった大家さんの考えは、
- それらの手法を知っているし、やってもいる。でも埋まらない。
- それらの手法を知っているが、自分の物件には該当しないと思っている。(つまり、やっていない。)
の、どちらかでした。
勿論、物件そのものに立地や周辺環境から需要が無い・少ない場合なども考えられます。
統計的には、(真実はどうか?定かでは有りませんが…)世帯数より物件の部屋数の方が何割も多い地域も有りますので、物理的に難しい場合も有るのは事実でしょう。
しかし、立地条件が悪くても、築年数が古くても、満室やそれに近い稼働率の物件も沢山見てきました。
それらの経験から言えるのは、空室問題に上手く対処している方・出来ている方は、その物件に合った基本的な手法がしっかり出来ているという事でした。
先程までに有った、全ての手法を行っているかどうかでは有りません。
その物件に合った手法を、必要なだけ行っているかどうかです。
つまり相談を受けて、「手法を知っているし、やってもいる。でも埋まらない。」という方の多くは、『きっちりできていない』方か、『手法が適していない』方でした。
また、「それらの手法を知っているが、自分の物件には該当しないと思っている」というのは、『適した手法を認識できていない』方でした。
裏を返せば、どの手法が適しているかが分かって、きっちりと行えば、それなりの確率で効果は出るものなのです。
実際に有った事例でお話しします。
『きっちりできていない』方の場合では、仲介業者さんへの周知不足が懸念された方のケースで、大家さんとしては近隣の仲介業者さんの殆どにお願いしているし、仲介業者さんとの関係も出来ており、物件の事も良く知ってくれているとの事でしたが、改めて物件資料を作り直し、週に2回FAXを送るようにし、更に一か月後に目立つようにと再度物件資料を作り直したところ、28戸中9戸の空室が2か月程度で8室入居が決まりました。
この大家さん場合、仲介業者さんへの物件資料は数年前に、とある仲介業者さんに作ってもらった物を、一部だけ変更して使い回していました。
しかも資料は、言われた時か半年に一度程度しか送っていませんでした。
それでは、知ってはくれていても印象には強く残っていない可能性が有るのです。
特に、仲介業者さんのお店に部屋探しの方が来店した時、応対した営業の方が、その物件を思い出さないと話しは始まりません。
『手法が適していない』方のケースでは、仲介業者さんへの周知は出来ていたのですが、部屋探しの方へのアピールが出来ていない事も有りました。
物件に、入居者募集の看板が無かったのです。
その物件は築30年近くで間取りは2Kと、はやりの物件では有りません。
しかし、大家さんが手間暇をかけてメンテナンスしていた為、小奇麗にされていました。
その為、自身が手間暇をかけているからと言う事も有るので見栄えが気になってか、仲介業者さんからの問い合わせはたまに有るからなのか、入居者募集の看板は付けていなかったのです。
イエ、正確には付いていました。敷地の奥まった所に小さな看板が。
そこで、目立つ様に付ける事を提案しました。
しかし懐疑的に思っていたのか、なかなかされなかったので、私が当時勤めていた会社の看板を1つ借りて、連絡先をその大家さんに変えて目立つ所に付けました。
すると、3ヶ月ほどで12戸中4戸有った空室が全て埋まりました。
入居されたのは年齢層が50代で、同じ市内の方ばかりでした。
インターネット経由の部屋探しが主流とは言え、まだまだインターネットを使わない方もいるのです。
特に、年齢層の高い方には。
『適した手法を認識できていない』方のケースでは、空室のカギを全て自分で管理していて、仲介業者さんがすぐに案内したいと思っても出来ない、という事が有りました。
大家さんが、平日は朝の9時から夕方の5時くらいまで管理人として物件の管理人室に常駐していたのですが、土日や祝祭日、夕方以降になると帰宅して殆んどいませんでした。
物件の近所に住んでいるならマシですが、電車で40分ほどの所に住んでいた為、仲介業者さんから電話連絡は付くものの、すぐに物件案内をしたいので鍵を借りたいとなっても、事前に借りておくか平日に案内するかしか無い状態でした。
大家さんとしては、これまでそれでやって来たことだし、“自分が”不便だったりした事は無い上、他人に鍵を預けるという事に抵抗も有ってか、仲介業者さんが案内しやすいように鍵を管理するという事に、必要性も感じなかった様です。
近隣の仲介業者さんにヒアリングした所、立地も良い物件だし、家賃などの条件も周辺と変わらない上、(大家さんが常駐しているだけに)綺麗に清掃等もされていて、出来れば客付けしたい・案内したい物件との事。
ただし仲介業者さんに、直ぐに案内出来ない物件であるとのイメージが定着してしまっていた様で、来店した方へのその物件の紹介・提示は、案内が後日になる事が初めから分かっている場合や、他に紹介できる物件が無い場合など、仲介業者さんの優先順位が低くなっていました。
仲介業者さんにとって、直ぐに手配できるかどうかは、かなり重要な違いである事をご理解頂くまでに時間が掛かりましたが、なんとかご理解いただき、近隣の大手の仲介業者さんに鍵を預かって貰うようになってからは徐々に空室が埋まり、その後は高い稼働率を維持しています。
これらの様に、意外に基本的な事が出来ていないケースは多いものです。
これまでの事例の様に、適した手法が出来ていれば、意外に空室が埋まる事も多いものです。
というより、賃貸経営で必要な基本的事項が出来ていないケースが、実は多いのです。
空室問題で悩む方は誰しも、その問題が100%解決する方法が有れば、それをする事は間違い有りません。
ただ問題なのは、100%解決する方法は実は無くて、『解決してくれるかもしれない方法』というのが有るだけなのです。
その為に、きっちり出来ていなかったり、必要性が認識できずにその手法をしなかったりするのです。
勿論、考えうる全ての手法を完璧にやれば良いのですが、それは現実的では有りませんし、なかなか出来るものでも無いでしょう。
現実的な方法としては、やはり可能性の高い事から試していく、と言う事になると思います。
では、その可能性の高さは、何処から判断すれば良いでしょうか?
これから空室対策を考えるような場合ですと、筆者の経験上は、大家さんの感覚的な言葉を借りていえば、
- 物件案内が有るかどうか
- 契約に至るかどうか
の2つが、最初の判断のポイントだと思います。
これは、集客とクロージング(契約)という分け方です。
同時に、実物を見るまでと、見てからの分け方です。
ここで、最初に有った図を思い出してほしいのですが、部屋探しの方と空室が結びついて入居が決まる流れは、どの物件も同じです。
- 部屋探し・検索(+問い合わせ)
- 来店(+仲介業者さんからの提案や紹介)
- 案内
- 契約交渉
- 入居
の流れです。
稀には、部屋を見ずに入居を決める事も有るようですが、それは少数派でしょうから省いて考えれば、物件案内が無ければ話しは始まりませんので、1つ目の判断のポイントだと思います。
とりあえずは検討対象になり、実物を確認に行かれたという事実が有るのですから。
物件案内が有るという事は、部屋探しの方の検討対象の範囲に入っており、競合物件との差も余り無いか物件に魅力が有るかでしょう。
案内数が少ないか無い場合は、部屋探しの方の検討対象(要望や需要)からズレている事が考えられます。
その場合には、部屋探しの方の検索や問い合わせ・仲介業者さんへの来店時での問題となりますので、集客という視点から問題点を検討してみて、具体策を実行すべきでしょう。
物件案内は有るものの契約には至らない場合は、物件自体の問題と、物件と契約条件のバランスが取れていない事が考えられます。
基本的には、物件案内をするまでは部屋探しをしている方は、“実物”を見ていません。
見ているのは、写真や動画などです。
それにプラスして、条件面を知っている状態です。
その状態での部屋探しの方の見込んだ“物件価値”や“損得勘定”と、実際に物件を見た時にそれらが、同じかそれ以上であれば契約する可能性は高くなりますが、低ければ当然に契約=入居とはなりません。
その場合は、クロージング(契約)の視点から検討する事が、近道になるでしょう。
物件自体への対策を優先して行うべきでしょうし、物件と入居条件とのバランスから条件面の再検討が必要になる事もあるでしょう。
この様に(あくまで筆者の考えですが)、実物を見るまでとそれ以降で分けて考える事が、第1歩です。
その次に、部屋探しの方が仲介業者さんへ来店するまでか?それ以降か?の分析が、集客面の第2歩目でしょう。
物件案内後に仲介業者さんを通じて、家賃の値下げ交渉や敷金や保証金などの減額等、条件交渉が多いなら物件には問題が無いか少ないものの、物件と条件のバランスが取れていない事が考えられるので、それらを検討するのがクロージング(契約)面での第2歩目でしょう。
物件案内は有るものの、条件交渉も何も無く案内ばかりに終わる場合は、要注意かもしれません。
いわゆる引き物・当て物になってしまっているかもしれません。
これらの様に、1段階ずつ考え分析して行けば、適切な手法にたどり着く可能性も高まるのではないでしょうか。
その物件に適した空室対策の手法が、直ぐに分かると良いのですが、なかなか分からないと相談される事も有ります。
相談を受けた時に筆者がよくお話しするのは、2つです。
1つは、ご自身の価値観や目線、考えを捨てて下さいと言う事。
もう1つは、俗に言う市場調査をしてみる事。出来ればご自身で。
ご自身の価値観や目線、考えを捨てて下さいというのは、どうしても自分の物件ですので、ひいき目に見てしまうからです。
最初に選ぶのは、あくまで入居者=部屋探しの人です。
その人たちと価値観や目線が一致していないと、何をどう考えても、正解は出る筈は有りません。
また、市場調査をご自身でしてみるというのは、その部屋探しの人達の価値観や目線を知る大きなキッカケになるからです。
また別の記事にて簡単に出来る市場調査に付いても書くつもりですが、市場調査といっても大げさな事や専門的・難しい事をするのでは無く、部屋探しの方と目線を合わせるのが一番の目的です。
それが出来れば、どの空室対策の手法が適しているか?必要か?が、高い確率で分かると思いますので。
最期に、空室対策そのものの捉え方です。
例えば、10戸中5戸の空室の物件に何かの対策をする場合、足し算を期待する方がいらっしゃいます。
何かの対策をすると2戸空室が埋まり、別の何かをすると更に2戸埋まるといった考えです。
この考え(期待)は、しない方が良いと思います。
筆者の考えは、掛け算が正解だと思っています。
その物件の魅力(潜在能力)×空室対策の可能性=空室が埋まる可能性、です。
その物件の魅力(潜在能力)が高ければ、空室対策の効果は出やすいですし、低ければかなり頑張らないと効果は出にくいものです。
空室が生まれない満室稼働の物件の魅力を100とすると、空室が発生する物件の魅力はそれより低くなります。
例えば、50としましょう。
そこに+30%の効果が期待できる対策を行なえば、
50 × 130% = 65です。
更に+20%の対策を行なえば、
65 × 120% = 78です。
この様な、考え(期待)が正解ではないでしょうか。
「あくまで、空室が埋まる可能性が高くなる」のであって、必ず空室が埋まるのではない、という事だと思います。
この考えが受け入れてもらえるなら、先ほどの適した手法を選ぶ時の参考にもなる筈です。
元の数字が大きければ効果は出やすいですし、元の数字が小さければ効果は出来にくくなります。
元の数字が小さい可能性が有るなら、根本的な手法を先ずは選ばなければなりません。
色々な手法を試してみたが効果が無い場合は、元の数字が小さいか?または、対策の手法をきっちり出来ていないか?の可能性が高いと思います。
なかなか空室対策には、コレで全て解決!という様な事は無い為に悩ましい問題では有ります。
しかし殆どの場合(筆者の経験上ですが)、何らかの解決方法が有るものです。
その解決方法は、特殊な事や奇抜な事では無く、殆どの場合、基本を徹底出来ているかどうかです。
しかし基本とは言いながら、完璧にこなす・やり切る事は難しい事でも有ります。
積み重ねや継続が必要だからです。
その為、誰かのチカラを借りるというのも、1つの手段だと思います。
誰かの何かの手法という意味でなく、対策を行う事へのモチベーション等の気持ちの面を充実させる、という意味です。
気持ちが萎えてしまったら、やはり対策をやり続ける事は出来ませんので。
そんな考えも“アリ”では無いでしょうか?