資産棚卸のススメ
不動産活用・相続対策の為の、資産棚卸のススメ
所有資産の姿?
不動産や相続についての相談をお受けしていると、ある不動産の事だけ・相続対策の一部だけ、といった形で相談をされる方がいらっしゃいます。
不動産が1ヵ所だけであったり、相続対策も何か1つすれば問題解決、という方はそれでも良いのですが、資産家といわれる方には、それでは偏った不動産活用や相続対策になってしまいかねない方も、多くいらっしゃいます。
相続対策の“考え方”と“順番”という記事でも書いたのですが、やはりベストは全体を踏まえて考える事であり、順序立てて方策や手法などの計画を立て、実行する事です。
しかしそうは言っても、なかなか考える事が多い為に、上手く全体像を捉える事は難しいものです。
その為まずは、所有資産の棚卸、全体の再評価・再確認、という事をお勧めしています。
相続対策の“考え方”と“順番”の記事で書いた、必要性の確認の為にも必要な事です。
所有資産の棚卸。
では所有資産の棚卸といっても、どのような事をすれば良いのでしょうか。
先ずは漏れが無い様に、全ての資産を確認します。
そして、それら資産が現状どうなのか?を、分析・再評価します。
その道の専門家に頼めば、細部にわたっての詳細な資料にまとめてくれます。
モチロンそれに越した事はないのですが、まだそこまでは…、とお考えだとしても、ご自分で出来る範囲ででも、される事をお勧めします。
筆者の考える、所有資産の棚卸で大事なポイントは、1つだと思っています。
それは、ご自身(又は関係者)が資産全体を理解しやすい事、
だと思っています。
なぜかと言えば、先ず全体がどこからどこまでかを知らない事には、1部分の詳細を考えても偏った方向性になってしまいかねないですし、全体を見渡せることが出来れば、どの部分をもっと詳細に分析・検討しないといけないかや、分析不足や漏れなどに気がつくキッカケにもなると思うからです。
当然、全てが完璧に最初から出来ている事がベストでは有りますが、まだ資産の棚卸をされた事が無い方や、これから不動産活用や相続対策を考え始める方、これまでも考えては来ているものの考えがまとまらない方、等は是非とも理解しやすいかどうか?という点を重視してみて下さい。
では、全体が理解しやすいとは、どういう事でしょうか?
以前、相続対策を前提にした不動産活用の相談をお受けした、あるご家族の事例を少しシンプルにして紹介してみたいと思います。
相談の最初でお聞きしたのは、相続対策が必要だと思っているという事、そして所有不動産に付いてでした。
〇〇と△△に、こんな不動産を持っていて、今こうなっていて、〇〇に有るマンションがこうなっていて…、それで相続対策として…と、色々ご説明やお考えをお話し頂きました。
しかしお伺いしているうちに、全体がどうなっているのかは、どうもよく分かっていらっしゃらないな?と思い、ご自身の資産に付いてより理解してもらえる様、そして今後の事を考えやすくなるように、話しの流れを持って行きました。
最初にお聞きしたのは、不動産に付いてです。
口頭でお聞きしても、私も仕事柄よほどの数や内容でなければ、理解できます。
しかしご本人に、分かってはいるけど“全体をほどよく見渡す”という事が出来ていない様に思えたので、一旦簡単な絵にしてからお話しを進めました。
こうして絵にする事は、たいしたことが無いようにも思われるかもしれませんが、人間は同時に沢山の事は考えられない・出来ないといわれていますので、やってみると意外と効果的です。
マジカルセブンという格言やワーキングメモリといわれる研究などでも、人は5~7個ぐらいまでしか、同時に考えたり理解したりは出来ないとか。
因みに家族関係はこうなっていました。
モチロンご本人の記憶の中には、これらは全てしっかり入っていますので、ご本人は全て知っています。
しかし、全体を見渡しながら考えるには、やはり頭の中だけでは難しいものです。
さて、相続対策を含めた不動産活用という事でしたので、全体を考える必要が有りますが、最初の口頭の情報だけで考えやすいでしょうか?
先ほどの2つの絵が、有るのと無いのでは、どうでしょう?
更には、相続対策を考えるならば、不動産だけを考えてもダメです。
他の金融資産なども考慮しなくてはいけません。
そこで次に、この様な絵をお出ししました。
そしてそこから、まずはたたき台としての分割を考えて行きました。
先ずは、たたき台・ベースとしての分割案ですから、上記の図の様になりました。
考えとしては、長男に“家”を継いでもらう・家系を守っていってもらう、次男には代わりに可能な限りの金融資産を渡す、という事でしたので、この様になりました。
現実的には、このままでは納税やその他に問題が出る可能性がありますので、そのままという訳にはいきませんが、考えをまとめるには、やはり絵が有った方が良かったと、大変喜んで頂けました。
そして大事なのは、この絵を見ながら、希望通りに出来るように細部をどうしていけば良いか?を、考える事が出来るようになった事です。
絵を眺めながら考えられる事、絵に落書きしながら、ああしよう!こうしよう!と考えられ事、ここはどうなる?あれはどうなっていた?などは、頭の中だけでは考える事は出来ても、なかなかまとめる事は難しい事も多いと思います。
実際には、先ほどのご家庭の事例の絵は、この記事の為に簡略化したものです。
また賃貸マンションを複数持たれている方などには、所得税対策として法人設立を利用していたり、所得の分散を図っていたりする事も多いと思います。
これも簡略化したものでは有りますが、その時に所得の流れを確認・検討した時の絵が、この様なものです。
実際には、A3サイズの紙にしてお渡しした為もっと大きいので、地代なのか家賃収入なのか、又その他の情報も記入して有りました。
これらの事を考えるには、文字だけで書いて有るより、パッと見て分かり易い方が理解も早いですし、それを元に分析・検討する事もやり易くなるのではないでしょうか?
モチロン、絵ばかりでは細部が分かりませんので、まとめた資料も同時に必要だと思います。
先程のご家庭の事例とは違いますが、例として下記の様な資料。
(クリックすると拡大します。)
(クリックすると拡大します。)
棚卸の資料や内容としては、これだけで完璧!なんていうものは有りません。
必要に応じて、これらの資料にプラスしていく事が現実的だと思います。
不動産の事を考えるなら、その土地や建物などについての情報や資料も、必要になってくるでしょう。
保険であれば保険証券の内容の確認、有価証券ならば現状の評価額やこれまでの推移などの確認も必要でしょう。
しかし大事な事は、人はなかなか、まとめて一度には考えられないという事です。
だからこそ、資産の棚卸の為には、分かり易いかどうか?が重要だと思うのです。
いくら詳細に調べてある資料でも、理解できなければ役には立ちません。
スタート部分・全体像の理解が深い程、詳細な内容についても考えやすくはないでしょうか?
棚卸的な事を全くした事が無く、これからという方でも、何も先程の様な“絵”にする事が目的では有りませんので、何かの紙に手書きしたような物でも、自分の理解が深まるなら良いと思いますので、一度試してみては、如何でしょうか?