賃貸事業の経費について

経費とは2種類

 

  “経費”とは良く使う言葉ですが、

       2種類有るのはご存じでしょうか?

不動産投資や有効活用の相談を受けると、収益についての話しになる事も沢山あります。

その中で収益の実際の内容や状況をお聞きすると、収入自体はよくご存知の方が多いのですが、“支出=出て行くお金”については、細かく考えられていない事が有ります。
“実費”ですぐに出て行くお金については、モチロン誰しも気になりますが、後々出て行く税金についてまで、事前に細かく検討している方は案外少ないものです。

基本的には税理士さんにお願いしていたりする事が多い為、内容を自分で計算した事が有る人は少ないでしょうし、専門家や知識が深くないと計算自体ができないから関心が薄くなる、という事も有ると思います。
また税金は、不動産所得の場合は他の収入と合算の上計算する事も有り、単独ではいくら?という答えが出しにくい事も有るでしょう。

しかし収入とは、“入ってきたお金―出ていったお金=収入”という構造は変わりませんので、大事なポイントです。

そして税金の話しになった時、よく出るのが“経費”というものです。
“経費”と言われてすぐに思い浮かべるのが、火災保険料や管理費、土地や建物の固定資産税などでしょう。
これらは実際に払うものですので、実感がしやすいものです。

しかしもう1つ、減価償却費というものが有ります。

 

 

これは、税金を計算する際にはとても大きな影響が有ります。
しかしこの減価償却費は、実際に毎年お金を払うものでは有りませんし、殆どの場合税理士さんが申告の際に計算しているので、あまり深く考えている人は少ないように思います。

この減価償却費自体は、何か対策をしたからといって、どうこうなるものでは有りません。
基本的には、決まった計算方法により算出されるものです。

しかし、不動産投資用の物件を買う時や有効活用を始める時には、是非とも把握した方が良いポイントだと思います。
特に、事業期間中や長期的視点で見てどうか?その間の関係性はどうなっているのか?というポイントです。

なぜ、自分で何かできる訳でもない減価償却費も考えた方が良いかといえば、1つは初期の計画だけでなく、10年先20年先の事も考える事に繋がるからと思うからです。
もう一つは、この事に付いての長期的関係性をイメージできれば、収益物件を購入する際に自分にとっては新築が良いのか中古が良いのか?なぜこの中古物件は売りに出されているのか?といった事の理由の片鱗が見える事も有るからです。

特に、これから不動産投資や有効活用を始める方ほど、分かりづらいでしょうが一度は考えてみた方が良いと思っています。

賃貸事業の収入とは?の記事でも書いたのですが、これらの専門的な事については特に初心者の方や、実は良く分からなくて…、という方も多いと思います。
減価償却費と経費の関係については特に。

その為、今回の記事も同様に初心者に方に少しでも、イメージしてもらう、理解する一助になれば、という事で少々解説してみたいと思います。

なお上記記事と同様に、ここでの記載や表現、用語などは、あくまでイメージしやすいようにする為、正式な表現・説明ではない部分が有りますが、その点はご了承ください。
また税務に関する詳細な部分は、先ずは分かり易くイメージして頂くために、無視していますので正式な事は税理士さんや税務署等に、ご相談・お問い合わせ下さい。
また、減価償却費と経費との関係性については、あくまで筆者の考えですので、その点ご了承ください。

まず、減価償却費とは何で、どうなるのか?という事です。

初心者の方むけに、要点だけ解説します。

税金は基本的に、“儲けた”分に掛かります。
そして賃貸事業の“商売道具”である建物を経費としましょう、という事です。

八百屋さんで言えば、商売をする為の店舗を購入したら、その店舗は商売をする為に必要な物であり“儲け”では有りませんので、必要経費として認めましょうという事です。
ただし、建物は長期間使うものですし使っている間に古くなっても行くものですから、ある一定期間に渡って経費化できるルールは決められている、という事です。
土地は減ったりしませんので、経費にはなりません。

ポイントは、建物本体と設備を分けて計算するという事です。
厳密には建物と設備の価格を細かく計算したり実際の金額を使うのですが、ルールでだいたい7:3(本体:設備)に分ける事が多いと、とりあえずは思って頂ければ良いと思います。

また、その計算方法はいくつかあるのですが、建物本体は定額法(一定期間に一定額)と決められていますし、設備は定額法か定率法(一定期間に一定の率)からの選択ですが、たいていの場合定率法でする事が多いと思います。(計算等についての詳細は割愛します。)

初心者の方には、減価償却費が計算できる事よりも、事業期間の間にどうなっていくのか?どう変化していくのか?の方を、掴んでもらう方が良いと思います。

そこで、あくまでイメージですが図にしてみます。
(シンプルに考える為に、建物を新築した場合を想定します。)

減価償却費 | イメージ図 | 長期の推移
(クリックすると拡大します。)

青色の部分が建物本体の減価償却費です。
構造などにより、どれだけの期間で経費化できるかが決まっています。
建物本体は、すぐに古くなってしまう訳では有りませんので、期間が長くなります。
それに対して設備の方は、建物本体より短い期間です。
たとえばエアコンなどは、30年も普通は持ちません。その為設備機器は短い期間での経費化になります。

細かい話しはさておいて、初心者の方に一番イメージして頂きたいのは、図の様に最初が一番多くて、15年(設備の償却=経費化の期間)を目途に少なくなり、その後は大規模修繕や増改築等をしなければ、一定の額のまま決められた期間続くという事です。

そして忘れてはならない大原則が、減価償却費は確かに建物を購入する時にお金を払っていますので、ただで手に入れた訳では有りませんが、基本的に毎年ごとには出費は無いという事です。
毎年その分には、税金が掛からない、安くなるという事です。

つまり、“お金の出ていかない経費”であるという事です。

初心者の方には、まだピンと来ないと思います。

そこで、もう一つの経費も考えてみます。
いわゆる普通に言われる経費です。

火災保険料や管理費、仲介手数料や修繕費などです。
これはわかりやすいと思いますので、説明は省きます。

ただし基本的・平均的な事として、修繕費などは設備の老朽化に伴い古い方がかかり易くなりますし、賃貸事業ですと10~15年程度ごとに外壁など一定規模以上の修繕をする事が多いと思いますので、修繕費を重要注目点として考えて、下記の図の様にイメージしてみます。

あくまでイメージ図です。
イメージとしては、年数が経つほど増える、一定期間毎にある規模以上の修繕をかける、というものです。
(シンプルに考える為に、建物を新築した場合を想定します。)

修繕費 | イメージ図 | 長期間の推移
(クリックすると拡大します。)

今回注目しているのは修繕費ですが、これは入居者が入っていなくても基本的には必要なもので有る事と、収益への影響が出やすい事からです。
(モチロン、実際には他の経費も影響します。)

そして、減価償却費との関係性で一番の注意点は、減価償却費とは違い、出費の有る経費であると言う事です

減価償却費と同様に申告時に経費化されれば、その額には税金が掛からない、又は安くなるという事は同じですが、今度は実際にお金が出ていく点が決定的に違う事です。

では、不動産投資用の物件を買う時や有効活用を始める時に、長期的視点で見る為にという事で、この図を比較してみます。

わかりやすいように・イメージしやすいように、重ねて図にしますので、見にくくない様に上記までの図とは、多少色が違いますが、ご容赦ください。

減価償却費 | 修繕費 | 同時に考える
(クリックすると拡大します。)

ポイントは2つです。
1つは、新築の場合は、当初に修繕費は殆どかからず(出費が無い)、その上出費の無い経費(減価償却費)が多い為、所得税などの税金も安い・場合によってはかからない、という事です。

もう1つは、年数が進むと出費の無い経費(減価償却費)は少なくなり、実際にお金の出ていく経費が多くなるという事です。

この2つのポイントは、“収入=手元に残るお金”に当然大きく影響します。

この全体像は、中古の収益物件の場合などは、修繕費は最初からかかるケースが多い事と、減価償却費の経費化できる期間が短い事などが一番の違いですが、大まかな形状としては同様になるのではないでしょうか。

この図を見て頂いて、何も新築が良いとか言いたい訳では有りません。
新築か中古物件のどちらが良いかは、買う人の考えや他の収入や資産にもよります。
中古には中古の大きなメリットも有ります。
(今回の記事では、割愛しますが…。)

どちらにも、メリット・デメリットが有ります。

今回解説した目的は、その物件を持っている期間・事業をしている期間に渡ってどのような関係性になっているか?という事を、知って欲しかった・イメージして欲しかったからです。

本来は、ここに家賃収入などの変化も考慮に入れるとより、解説した意図をわかってもらいやすいとは思うのですが、複雑になってしまいますので、今回は入れていません。
(可能であれば、ぜひ家賃収入なども一緒に考えてみて下さい。)

では、なぜイメージして欲しかったか?全体像を掴んでほしかったか?といえば、例えば相続対策の一環として所有地に、節税目的でマンションを建てたりした人の中には、失敗だったという人もいます。
原因は色々・人それぞれだとは思うのですが、何割かの方はこの様な事を考えておらず、相続税の節税にはなったが毎年の税金が高くなってしまい、結局のところ得したのか損したのか分からない…、などという方が多かった事からです。
(モチロン税金のみが理由では無いでしょうが…。)

また、収益物件を買って失敗だったという人の何割かは、今回の図(全体像)と家賃収入とローンの返済を一緒に考えるとどうなるか?を購入前に考えていれば、そうはならなかったのに…、という方が多かったからです。

細かい事情・状況や条件は、個別に違うとは思いますが、この経費についての事は、ぜひとも留意しておくべきポイントだと思います。

賃貸事業が失敗だったという方の話しを聞くと、その原因の1つである場合が多い訳ですので、もし興味が有ればご自身の物件に付いて、ご自身の計画について考えてみて下さい。


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